“In memory of Seizo Fukumoto”〜 福本清三さんを偲んで 〜(3)

現在、今春3月に第一期リニューアルオープンした太秦映画村では『太秦撮影所創設記念[太秦時代劇100年]~撮影バックストーリー~』を開催中です。時代劇スター坂東妻三郎が京都太秦の地に撮影所を建設した1926年から百年という節目の年を記念した展示イベントです。

新設された会場・太秦城の入場口では、その坂妻(ばんつま)主演の映画『雄呂地』(二川文太郎監督、1972年)の場面写真とともに、在りし日の福本清三さんの姿がコラージュされたパネルが掲示されています。

これらのスチル写真は、以前のコラムでも紹介した『福本清三 時代劇ショー』で撮影されたものが使われています。

福本清三/映画村限定クリアファイル(2010年発売) 右:表面/左:裏面

2002年、東映太秦映画村で4月~5月毎週土日公演のイベント『福本清三斬られる!新選組外伝』として始まり、翌2003年の秋には『福本清三斬られる!新選組義勇伝』と題して二カ月間の公演。日本人キャストのなかでも異例の抜擢が話題になった映画『ラストサムライ』(エドワード・ズウィック監督、2003年)効果も追い風になり、2005年からは春と秋の観光シーズン恒例の人気イベントとなったチャンバラ時代劇ショーです。

このイベントは時代劇の定番である“斬る側”が主役ではなく、それまでにない“斬られる側”を芯に据えるコンセプト。<斬られ役・福本清三>をタイトルに掲げるということも、数々のイベントを開催してきた映画村でも前例がないことです。しかも主役である役者が斬られて命を落とすエンディングが見せ場とならなければ成立しない難易度の高いものです。当時の映画村スタッフの意気込みを感じるチャレンジングな企画だったと思います。毎年、毎公演、内容を更新しては試行錯誤を重ねた結果、好評を博して2011年春の公演まで続きました。

左から:福本清三、大石彩未、柴田善行

 

2010年4月18日 撮影:田村啓

そしていつの頃からか、このチャンバラショーの観衆には多くの子供たちの姿が見受けられるようになります。おそらく、小学5年生を対象にした道徳の教科書(文溪堂、2005年)でのエッセイ『どこかで誰かが見ていてくれる —福本清三』の収録や、子供たちに人気のTV『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(2007年)、映画『炎神戦隊ゴーオンジャーBUNBUN!BANBAN!劇場BANG!!』(2008年)、 TV『仮面ライダーWダブル』(2010年)、映画『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(2011年) などの仮面ライダーや戦隊シリーズのゲスト出演が重なったことの影響も幸いしたのかもしれません。

・仮面ライダー図鑑 | 櫓の久蔵 | 東映

・仮面ライダー図鑑 | ブラック将軍 | 東映

上の写真でも最前列で息をのんで見入っている幼い子供たちの様子から、当時のチャンバラショーの熱気が伝わってきますね。

当時一日三回の公演終了時に行われていた記念写真撮影会に詰めかけた子供たちの目線に合わせ、身をかがめ握手をしていた福本さんが深く印象に残っています。

2010年4月18日 撮影:田村啓

その頃の福本さんと交わした忘れられない会話がいくつかあります。

ある映像作品のキャステング候補に福本清三の名が挙がり、スケジュールさえ問題なければ成立という流れだったのですが、どうしても映画村イベントの日程と数日重なってしまいます。昔から撮影所では仕事に於いて“映像作品/撮影が優先”の不文律もあります。

「映画村にはこちらからお願いしてみるので、来月の二日ほど福本さんのショーは公演中止にして貰って、この撮影を受けましょうか? 」

少し考えてから福本さんは答えられました。「そうやなぁ…。早うから告知してくれているイベントやからショーを中止にする訳にはいかんしなぁ。映画村のスタッフにも迷惑かけられへんからなぁ。その撮影の方をお断りするっちゅうわけにはいかんやろか? 」

一年の内、春秋の四か月以上に亘る期間の土日祝日が福本ショーの日程に拘束される訳ですから、その後もそう言った案件は少なからずありましたが、映画、テレビ、その作品の規模にかかわらず、「手間をかけてすまんなぁ。」と福本さんの答えは一貫して変わりません。

ある時は腰痛持ちの福本さんに「(毎回ショーで) あんなに全力で倒れ込んで(腰は)大丈夫ですか?」と尋ねたこともあります。

福本さん曰く、劇場で座席指定のチケットを買って、その席に座って舞台のお芝居を観るお客さんと違って、映画村の内で色々ある出し物の一つに過ぎない屋外イベントで「これを観たい」とお客さんに「足を止めてもらう」為には「ぜったい手を抜いたらアカン」と。

もしかしたら「一生に一度の京都旅行かもしれんやろ?」そんなお客さんに「いい加減なもんは見せられへんで」と笑っておられました。

2010年4月18日 撮影:田村啓

「そうか、このショーは福本さんの“ライフワーク”なんだ…。」

ご自身でそれを口にするような方ではありません。

しかし、日に二箱のマイルドセブンを吸うヘビースモーカーだった福本さんが(肺気腫を患ったこともありますが)煙草を止め、夜のウォーキングを人知れず日課として続け、体調管理に心を配った日々の取り組みを目の当たりにするにつけ、そんな想いを強くしました。

それを機に、この時期に使用していた配布用の福本清三略歴に「2002年より東映太秦映画村で開催されている自身の名を冠した時代劇イベントにライフワークとして取り組んでいる。」という一文を加えました。

それを読んだ福本さんからの反応は、実は特になかったのですが、否定はされなかったので、間違いではないだろうと、その時は都合よく解釈して、ご本人にしっかりと確認しなかったことが、今更ながら悔やまれます。

以後、福本さんの春秋のスケジュールは『福本清三 時代劇ショー』を優先することを心掛けたことは言うまでもありません。

そしてこの東映太秦映画村の時代劇イベントなくしては、その後の「斬られ役・福本清三主演映画」という発想は生まれなかったであろう事も間違いのない事実です。

2010年10月11日 撮影:田村啓

映画図書室では上記台本のほか、ご紹介したスチル写真や書籍などの関連資料を収集・所蔵しています。

太秦映画村にて2027年3月末まで開催予定の『太秦撮影所創設記念[太秦時代劇100年]~撮影バックストーリー~』とあわせて、ぜひともご活用ください。

資料の閲覧を希望される方は、下記のより事前申請をお願いいたします。

(西嶋勇倫)