“In memorry of Seizo Fukumoto”〜 福本清三さんを偲んで 〜(2)

2000年11月29日、朝日新聞掲載「天声人語」で<斬られ役・福本清三>が紹介されました。思い返すと福本さんの周囲が俄かに慌ただしくなって来たと感じたのはこの辺りからでしょうか。

2001年5月24日NHKのドキュメンタリー番組『にんげんドキュメント斬られ役~大部屋俳優58歳の心意気』。同年11月26日には前回紹介した単行本『どこかで誰かが見ていてくれる日本一の斬られ役福本清三』が創美社より出版。2002年、東映太秦映画村春イベントとして自身の名を冠した初の時代劇ショー『福本清三斬られる!新選組外伝』が開催され、以降十年間続く人気イベントとなります。そして、その年の7月にはアメリカ映画『ラストサムライ』(エドワード・ズウィク監督、2003年)への出演が決定します。

VHS『福本清三斬られる!新選組外伝』(関係者配布品、2022年)
2010年4月18日 撮影:田村啓

今回先ず、紹介したいのが『ラストサムライ』出演後の福本さんを取り上げたエッセイが収録された三冊の学校教材です。

・小学五年生の道徳教科書『5年生の道徳』収録:どこかで誰かがみていてくれる-福本清三(文溪堂、2005年)

・中学三年の道徳副読本『中学生 キラリ☆道徳③』収録:五万回斬られた男(正進社、2012年)

・中学二年生の道徳教科書『とびだそう未来へ 中学道徳2』収録:五万回斬られた男 福本清三(教育出版、2018年)

15歳ではじまる大部屋俳優としての生活から、60歳の定年前にトム・クルーズ主演のハリウッド超大作に抜擢されるまでの半生を自ら語るという内容です。

これらの教材が刊行される度、学校で道徳の授業を受けた小中学生からたくさんの感想文が撮影所に度々届くことになります。福本さんはその感想文の束を手に取り「ありがたいことやな…。」と毎回恐縮しながらも嬉しそうに目を通しておられました。

そしてこのエッセイで語られるのが萬屋錦之介(初代・中村錦之助)さんとの邂逅(かいこう)です。

当時23歳の福本さんはある映画の撮影現場で憧れの錦之介さんから声をかけられます。

「 おまえ斬られ方がうまいな。」

映画『太秦ライムライト』(落合賢監督、2014年)の劇中でも再現されたエピソードです。

それは中村錦之助主演、五社英雄監督作品『丹下左膳 飛燕居合斬り』(1966年) の撮影現場での出来事でした。

今作で福本さんは錦之介さんの“スタンドイン/吹き替え”を、当時剣会の先輩でもあった宍戸大全氏の推薦もあり、殺陣師の足立怜二郎氏から任されていたのですが、片目・片腕でのスタントは「想像以上に難しく」、あるシーンでは大怪我をしてしまい「現場にえらい迷惑をかけてしもうたんや…」と当時を振り返り話されていた福本さんの表情が目に浮かびます。

20歳頃からスタントマンとしての活動を始め、徐々に東映剣会の会員としても認められてきた時期であったでしょう。1965年の資料[1]から会員として名前が明記されていることからも推測できます。斬られ役として試行錯誤を続けていた若き日の福本さんが「今までの自分の取り組みは間違っていなかった」と確信できた一言でした。

[1]資料「東映京都撮影所 劔会規約(1965年)」より【顧問/殺陣師:足立怜二郎、委員/会員:宍戸大全、会員:福本清二(原文ママ)】

福本さんにとってもうひとつ重要なことは五社英雄監督との出会いです。翌年の『牙狼之介 地獄斬り』(1967年)に始まり『鬼龍院花子の生涯』(1982年)、『北の蛍』(1984年)、『極道の妻たち』(1986年)、『肉体の門』(1988年)など、東映京都で撮影された五社監督作品に起用される切っ掛けになりました。1986年新宿コマ劇場舞台公演の出演から生涯続いた八代亜紀さんとのご縁もその舞台演出を手掛けられていた五社監督の推薦あってのことだったそうです[2]。

[2]メールマガジン「福本清三ファンクラブニュース(2017/05/23)」参照

テレビドラマ『藤田まことの丹下左膳4 彷徨う丑三つの花嫁 江戸城に渦巻く大陰謀!』(吉川一義監督、1994年) 藤田まこと吹替を演じる福本清三

錦之介さんが丹下左膳を演じた唯一の作品でもある映画『丹下左膳 飛燕居合斬り』から続く五社英雄監督諸作品を、各年代の在りし日の福本さんに思いを馳せながらご覧になる良い機会になれば幸いです。

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