[展覧会] 没後50年 映画監督 田坂具隆@国立映画アーカイブ

2024年9月7日(土)から11月24日(日)まで、東京・国立映画アーカイブの展示室にて、企画展「没後50年 映画監督 田坂具隆」が開催中です。1920年代後半から1960年代前半まで活躍し、数多くの名作を生みだした、映画監督・田坂具隆の仕事を通観する初の回顧展です。笹沼真理子・佐崎順昭・佐藤千紘編『ぐりゅうさん 映画監督田坂具隆』(国書刊行会)の刊行に合わせた企画で、10月からは同館で田坂具隆特集上映も行われます。

本展示は「小さきものへの眼差し 明治~昭和初期の子どもたち」、「戦争と人間と」、「小さきものへの眼差し 戦後の子どもたち」、「文芸映画にみる戦後の再生」、「ひと・暮らし」というテーマ別の全5章で構成されています。戦前、戦中、戦後の田坂作品の製作資料や宣伝資料から、田坂監督の「小さきもの」に寄り添う姿勢、人間性への洞察が浮き彫りになります。

東映太秦映画村・映画図書室からは、東映京都撮影所のスクリプター・田中美佐江氏旧蔵の台本、田坂監督が田中氏に贈ったストップウォッチ、田坂監督の揮毫の色紙、手製の硯箱、ポケットカメラを提供しています。

撮影現場の田坂具隆監督(映画図書室所蔵)。

会期中には、近日刊行予定の『ぐりゅうさん 映画監督田坂具隆』の編者たちによる特別イベントも実施されます。9月21日(土)の「戦争と子どもと 田坂具隆の二つの幻の企画」では、映画研究者の佐藤千紘氏が講師となり、田坂監督の幻の企画『ビルマの竪琴』と『夕刊小僧』を手掛かりに彼の戦後の仕事を振り返ります。田坂監督の命日の2日後である10月19日(土)には、午牛会代表の笹沼真理子氏と国立映画アーカイブ客員研究員の佐崎順昭氏による展示の解説が行われます。11月16日(土)の音声資料紹介「岸松雄が語る田坂具隆」は、佐崎順昭氏が講師を務め、1975年の旧フィルムセンターでの『路傍の石』(1938年)上映時に映画評論家の岸松雄氏が行ったトークの録音を公開するイベントです。

本企画展に合わせて、10月から11月にかけては、館内の長瀬記念ホール OZUで田坂具隆監督の特集上映も行われます。現存する田坂監督作品がすべて網羅されるほか、田坂監督と親交のあった映画人の関連作品、田坂監督に影響を与えた作品など、計41作品が上映される大規模なレトロスペクティブです。『土と兵隊[最長版]』(1939年)や『鮫』(1964年)など一部の作品はニュープリントでの上映です。これまで視聴困難だった作品も数多く上映される、貴重な機会となります。

10月11日(金)の田坂監督作『月よりの使者』(1934年)上映は澤登翠氏の活弁と柳下美恵氏の伴奏つき、10月12日(土)の田坂監督の初期作『更生』(1927年)『愛の町』(1928年)および関連作『特急三百哩』(1928年)『暢気眼鏡』(1940年)上映は、それぞれ天池穂高氏と神﨑えり氏の伴奏つきで行われます。

映画図書室では、田坂具隆監督の作品に関して、台本をはじめとした数多くの資料を所蔵しています。ぜひ、映画図書室で資料を手に取り、田坂監督の作品の世界に触れてみてください。

東映時代の田坂具隆監督作品の台本(映画図書室所蔵)。上段左から『親鸞』および『続 親鸞』(1960年)、『はだかっ子』(1961年)、『ちいさこべ』(1962年)、下段左から『鮫』(1964年)、『冷飯とおさんとちゃん』(1965年)、『湖の琴』(1966年)。
戦後の田坂具隆監督作品の台本(映画図書室所蔵)。左から『長﨑の歌は忘れじ』(1952年)、『今日のいのち』(1957年)、『スクラップ集団』(1968年)。
田坂具隆監督作のシナリオ所収の映画雑誌(映画図書室所蔵)。上段左から『五人の斥候兵』(1938年、『キネマ旬報 別冊シナリオ古典全集 第4巻』 )、『土と兵隊』(1939年、『キネマ旬報 別冊シナリオ古典全集 第5巻』 )、下段左から『陽のあたる坂道』(1958年、『キネマ旬報』第200号臨時増刊)、『若い川の流れ』(1959年、『キネマ旬報』第223号臨時増刊)。

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(中村洸太)