展覧会「映画監督 森田芳光」@国立映画アーカイブ

2025年8月12日から、東京・京橋の国立映画アーカイブで、展覧会「映画監督 森田芳光」が開催されています。森田芳光(1950–2011)といえば、松田優作主演の『家族ゲーム』(1983年)をはじめ、毎回異なるテーマやジャンルに挑戦した作品を発表し、1980年代以降の日本映画界をけん引した監督として知られています。

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東京・渋谷で生まれ育った森田監督は、高校時代に観たデイヴィッド・リーン監督『ドクトル・ジバゴ』(1965年)に感銘を受け、映画に開眼しました。当時、実験映画が注目を集めており、その影響を受けた彼は、日本大学芸術学部放送学科在学中に、自主映画の制作を始めます。1978年に発表した『ライブイン茅ヶ崎』が自主製作映画展(現在のぴあフィルムフェスティバル)に入選し映画界で頭角を現すと、1981年には『の・ようなもの』で商業映画デビューを果たしました。

1980年代森田監督作品を代表する脚本の数々。

以降、『家族ゲーム』をはじめ、薬師丸ひろ子主演『メイン・テーマ』(1984年)、役所広司・黒木瞳主演『失楽園』(1997年)など数々のヒット作を手がけました。森田監督の作品は喜劇や恋愛映画、文芸作、法廷劇、ホラー、時代劇まで幅広く、ジャンルにとらわれない多彩さと、既存の撮影技法を超えた映像表現が特徴です。今回の展覧会にあわせて、国立映画アーカイブでは特集上映も行われ、全31プログラム中15作品が新たに用意された35mmニュー・プリントでフィルム上映されます。貴重な大スクリーンでの体験にご期待ください。

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展示室に入ってまず目を引くのは、『家族ゲーム』で使われたセットの再現です。登場人物5人が横一列に並んで座るあの有名なダイニングテーブルが、当時の設計図に基づいて実物同様に復元されています。

また、森田監督が愛してやまなかったジャズのレコード(お気に入りはマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーン)や愛読書も展示されています。『黒い家』(1999年)をはじめとする森田作品の美術を手がけた美術監督山﨑秀満氏の監修による立体的な空間構成によって、森田芳光を形づくってきた日常の息づかいを感じられる展示となっています。

さらに、10月18日には監督の妻で映画プロデューサーの三沢和子氏によるトークイベントが予定されています。聞き手は国立映画アーカイブ特定研究員の佐野亨氏で、展覧会/特集上映企画の背景から映画製作の裏話まで、ここでしか聞けない貴重なお話が披露されるでしょう。

展示室に入るとまず入場者を出迎える、本展覧会のメイン・パネル。

最後になりますが、東映太秦映画村・映画図書室では、森田監督の商業映画第1作『の・ようなもの』(1981年)から、遺作となった『僕達急行 A列車で行こう』(2012年)までの脚本や関連資料を所蔵しています。ご利用の際は、映画図書室データベースにて検索のうえ、専用フォームより事前申請をお願いいたします。

映画図書室が所蔵する森田監督の脚本の数々。

 

本図書室が所蔵する台本は、データベース検索ページより検索いただけます。見当たらない場合は、申請フォームやメールからお問い合わせください。

資料の閲覧をご希望の方は、以下の専用フォームより事前に申請をお願いします。

日本映画を革新し続けた森田芳光監督の世界を一望できる貴重な機会です。ぜひ会場に足をお運びください。

(國永 孟)