[新刊紹介]藤原征生『芥川也寸志とその時代 戦後日本映画産業と音楽家たち』(国書刊行会、2025年)

元映画図書室スタッフで現在は国立映画アーカイブ特定研究員の藤原征生氏による『芥川也寸志とその時代 戦後日本映画産業と音楽家たち』が2025年3月に国書刊行会から出版されました。

今年生誕100周年を迎えた芥川也寸志は、戦後日本を代表する音楽家であり、伊福部昭や早坂文雄、團伊玖磨や黛敏郎などと並んで数多くの映画音楽を手掛けた人物です。著者の博士論文がもとになった本書は、芥川による膨大な仕事を「映画(映像)音楽」の観点から綿密に描き出す一冊となっています。

本書の構成は以下のとおりです。

  • 序言
  • 第一章 芥川也寸志の音楽作品における映像音楽の量的・質的重要性
  • 第二章 「3人の会」超スタジオ・システム的存在としての作曲家グループ
  • 第三章 芥川也寸志音楽作品論(Ⅰ)モティーフの流用
  • 第四章 芥川也寸志音楽作品論(Ⅱ)テーマ音楽の強調
  • 第五章 芥川也寸志音楽作品論(Ⅲ)特徴的な楽器の使用ーーチェンバロを中心に
  • 第六章 芥川也寸志音楽作品論(Ⅳ)「3人の会」との繋がりからーー『地獄門』を例に
  • 結語

第一章では、芥川の音楽作品における映画(映像)音楽の位置付けと、芥川の仕事に映画学・音楽学の両面からアプローチする学術的意義が示され、、第二章では、芥川、團、黛による作曲家グループ「3人の会」が、戦後の日本映画産業における「スタジオ・システム」期に、如何に特異な存在として映画・映像業界と関わりながら創作活動をおこなっていたかが詳述されます。続く第三章から六章までは芥川映像音楽についての具体的な作品論に充てられ、映像音楽を介した芥川作品の独創性が論じられています。さらに巻末には、芥川の映画音楽フィルモグラフィ、主要ラジオ作品、主要テレビ作品の一覧など貴重な情報資料が収められています。

また、2025年5月24-25日には、京都国立近代美術館で特集「日本映画と音楽ーー生誕100年 芥川也寸志」が開催され、『白い牙』(五所平之助監督、1960年)と『東京湾』(野村芳太郎監督、1962年)の二作品が上映されます。両日とも、藤原氏によるアフタートークが予定されています。どちらも上映機会の少ない作品ですので、この機会にぜひチェックをしてみてください。

映画村映画図書室では、『地獄門』(衣笠貞之助監督、1953年)や『地獄変』(豊田四郎監督、1969年)など、書籍『芥川也寸志とその時代』で取り上げられている作品の台本を多数所蔵しています。ぜひ合わせてご活用ください。

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(原田麻衣)